「影裏」
唯一心を許した友人、彼にはもう一つの顔があった
それを知った時、あなたは。
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「影裏」について
本作品は、芥川賞受賞作品です。
著者は、沼田 真佑さん、この作家さんの本を読むのは本作が初めてでした。
まず読了後に思ったこと、本作品では、人の心であったり、人間関係を表す言葉が独特で、微妙な関係を絶妙な言葉のニュアンスで表現してあると感じました。
人の心であったり人間関係というものは、実に微妙で繊細な部分です。そういった部分を繊細な言葉で書くことで、その繊細さをよりリアルに表現できていて、更に読者に繊細な感覚が伝わると感じました。
はまる人にはぴったりとその感覚がはまるのではないかと思いました。
親友のもう1つの顔
本作品の主人公である男性は、安心して友人と呼べる間柄の人がいない。
そんな毎日を送っている男が、ある男と出会い釣りを通して段々と友人関係へとその関係を進め深めていきます。
やがてその関係は、親友と呼べるような間柄へとなっていたのですが、ある日突然その親友は姿を消しまてしまいます。
その時は敢えて探そうともしなかったのですが、姿を消した親友は実は生きていないのではないかという噂を聞きます。
その噂を聞いた主人公は親友の死を想像し確かめるために、親友の親の元を訪ねます。しかし、そこで主人公は親友の意外な話を聞くことになります。
父親の口から飛び出した言葉は、行方不明になっている息子であるはずの親友への言葉にしては、厳しい内容の言葉だったのです。
しかも、もう親友のことを、もう息子ではないのだという事実まで飛び出したのです。
そして主人公はそこで、親友の知らない一面を知ることになります。
男にとっては気の合う親友。しかし、主人公が知らないところで聞く彼の噂は、男が親友に対して持っているイメージとはかけ離れたものだったのです。
そんな時、主人公の男は、イメージとかけ離れた自分の親友に対して、どう思っていくのか。
心を許した親友に違う一面があった時、自分なら彼に対してどう接するだろうと考えましたね。
きっとちゃんとした答えは出ないのかもしれないけど。
「影裏」を読んで!まとめ
本作品は、全体と通して周りの景色や人の心や感情、そして人間関係というものを、実に繊細な言葉で表現していると感じました。
ストーリーに意外性や驚きと言ったものは感じられませんでしたが、普通の人間関係にある状況を実に繊細に描き、読者がその状況をよりリアルに感じられるように表現されてるため、その世界にグッと入り込むことができる作品です。
結末でどんでん返し!などの展開はありませんが、人の心の変化や想像していることなどを綺麗な言葉を使って描き、そこに読者は何を感じるか、どれだけその感覚を読み取ることができるかという点が、本作品の楽しみ方のような気がしました。
様々な言葉で表現される人の心情など、読者がそれをどう感じ、どう解釈するか、そこに幅を持たせている作品なので、読む人ごとに感じ方が異なる結果になると感じました。感想や評価にも幅が出てくる作品だと感じる人もいるでしょう。
ネットなどで本作品の感想を検索して読んでみると、「面白い作品だ!」という感想と同じくらい、「この小説は何が言いたいのか分からない」という感想も多く見かけました。
確かに、最後の結末の部分でも、「この小説はこういうことを言いたかったんだ!」というような明確な表現や主張は無いように感じました。
だからこそ読者自身が考える、想像する。色々な解釈でこの作品を感じ、感想を言えるということになるのだと思いました。
日常で誰もが経験する人間関係だから、読む誰もがその世界、状況を自分のことのように想像し、イメージすることが出来る。
そんな繊細な人間関係や心理的な部分、その部分にあえて結論を設けないことで、この作品を、読みながら読者が持つ感覚や感想というものに幅が出てくるのだと私は解釈しました。
だからこそ読了後には、他の作品とは違う、ぼやっとしているのだけど、独特の余韻が残る。
面白いという一言で表現できない、締めくくれない作品だと思いました。
読みながら、自分のイメージを広げられる作品かな。
読んだ後に感じた余韻。最後にはっきりとその結論、答えを言わない雰囲気が、読者の好きなように解釈してくださいと言っているような、不思議な感じの作品。
今回読んだのは文庫本でした。
文庫本では、「影裏」だけでなく、「廃屋の眺め」、「陶片」も収録されています。沼田真佑さんの世界を更に楽しむことができます。
「影裏」SNSでの反応!
SNSに投稿されている「影裏」に関する投稿を見つけましたので掲載しています。
沢山の投稿がありましたが、その中から心に残った投稿を掲載させていただきました。
Twitterでの反応!
ツイッターでも「影裏」に関するたくさんの投稿があります。
中村文則さんの人気の高さがよくわかります。
ほんとに芥川賞?と疑ったあたりで、読み手の先入観は一刀両断。
書かないことを周到に選び、書かれなければならないを浮かび上がらせる。一歩間違えると成立しない、おそらく危険な手法だけど、他二篇も合わせて単なるビギナーズラックでないことを証明。 pic.twitter.com/vUTA7yUbG8
— もうマサル@ (@masaki_tweeeeet) June 11, 2020
#影裏 #沼田真祐 著 #読了 映画の予告編をみて気になり、映画を見る前に読みたいと思って購入。表題作含む三部作。三作共に自然や風景描写巧みで、感情と景色とがうまく混ざり合っていた。監督自身も主人公の見た、複雑で脆い景色を、映像で表せられないだろうかと思ったのだろう。映画も観たいな🎬 pic.twitter.com/K04Vg6fACb
— なぎ@マシュマロ始めました↓ (@nagibookac) August 30, 2020
Instagramでの反応!
Instagramでも多くの方が「影裏」について読了後の感想を投稿されています。
画像とともに、深い感想を投稿されています。
ご興味のある方は是非ご覧になってください。
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心をゆるした親友には、知らないもう1つの顔があった。突然姿を消した親友を探し、その先で聞いた親友の噂。そのもう一つの姿に気付いた時、自分ならどうするか。
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