【読書感想】
◆64◆
昭和に取り残された事件に犯人を引きずり戻す!

読書感想小説ミステリ―

「64」

64

事件はまだ終わっていない!
昭和64年に取り残された事件を追う!

本の基本情報
  • ジャンル:日本文学・小説・ミステリー
  • 本の種類:文庫本
  • 著者名:横山 秀夫
  • 出版社:文春文庫

私がこの本を選んだ理由

この小説も映画化という事を聞いてから原作である本書を読んでみようと思いました。

この小説の場合
本屋さんに行った時に、既に映画の予告編が流れていて
キャストが分かった状態で読み始めました。

しっかりとした内容は分からない状態でしたが
予告で見た程度の内容を分かっている状態でした。

それでも、実によくできたストーリーで
読み始めると一気に読み終えてしまいました。

著者「横山 秀夫」について

小説家、推理作家として活躍されています。

本屋に行くと、著者の作品は沢山並んでいます。
実に有名な方で、読書家の中ではファンが多いです。

もともとは記者として活躍されており
その後は、なんと週刊少年マガジンでマンがの原作などを書かれていたということです。

数々の賞を受賞された実力者で
私も小説は、本書以外も読ませて頂いています。

本書「64」について

本書の始まりは
わずか7日しかなかった「昭和64年」から始まります。

そこで起きた少女誘拐事件「ロクヨン」と呼ばれる未解決事件に携わった
刑事部広報室の広報官である「三上義信」の目線で、ストーリーは進められていきます。

元は捜査二課に所属していた刑事であった三上と、他の刑事達との間で繰り広げられる
人間関係や刑事部と警務部との組織関係などが平成へと移った舞台の中で展開されていきます。

平成を迎え、時効が近付く「ロクヨン」と呼ばれる事件の解決に向けて動く組織や
それぞれ事件に関係した人間達の感情や考えを複雑に織り交ぜながら、ストーリーは進んで行きます。

  • 「ロクヨン」という事件を利用する、組織の仕組み
  • 事件の被害者である父親の思い
  • 事件の加害者である人物の人生
  • 三上義信自身の家庭での娘との問題
  • 警察内部の組織関係
  • 被害者である少女を救えなかった三上の思い、警察の隠ぺいやメンツ、悔しさ

これだけの様々な人間関係や感情を上手く表現しながら
事件解決と組織の問題解決、家庭の問題解決が同時に進行していきます。

そして最終的な事件解決では
解決に向けた組織の複雑で考えられた動きが実に巧妙に仕掛けられており
追い詰められていく犯人の心理的な焦りや、警察の正義感などがじわじわと伝わってきます。

そしてクライマックスである事件の被害者である父の行動。

娘を殺された、家族を壊された父の静かな執念。

昭和64年に1人で残っていた父。

時代は新しい平成を迎えていたが、昭和64年の7日間に居た父の思いが
心に突き刺さります。

多くの人間と組織の関係や感情が実に上手く表現されている作品だと思います。

三上義信の家庭での問題

三上の娘は家でしており行方不明のままの状態です。
三上と娘の関係が悪化して
娘は家を飛び出します。

そのことで、警察内部では弱みに付け込み
三上を従わせようとする人間もいます。

本ストーリーが進みながら
三上が家庭で抱える問題でも追い込まれている状況というものが背景にあります。

親と子供の関係性についても
娘を亡くした被害者の父との関係に絡み合い、父親の感情というものも
上手く表現されています。

組織の関係

このストーリーでは
最初から最後まで、組織の関係が絡んできます。

広報官である三上は、記者クラブとの関係に頭を痛めます。
警察組織と記者クラブとの間に立たされ
関係修復に手を焼きます。

警察組織と記者クラブの全面的な争いの中で
広報室の部下たちとの人間関係を構築していきます。

更に、警察同士の刑事部と警務部との関係性も絡んできます。
この軋轢にも三上は振り回されることになります。

それぞれの立場の人間の個々の感情を
複雑に絡めて、ストーリーは進みます。

この個々の人間の感情のニュアンスを感じとれるかが
本書の面白さの鍵でもあると思います。

警察の隠ぺい

「ロクヨン」事件の解決を左右する出来事があり
そのことで警察が隠ぺいをしていたという事実を突き止めます。

その隠ぺいについて暴こうとする三上。

その隠ぺいの裏にもまた
多くの人間が絡んでおり、組織の体質も絡んでいる。

この隠ぺい問題についてもストーリーの背景としてよく設定されている。

「64」を読んで!まとめ!

本書を読んで、感じた事は、登場人物の多さと、その関係の複雑さ。

未解決事件があり、それを解決するために1人の刑事が奮闘する!

普通はそういう内容だと思うのだが
本作品は、そう簡単で単純ではない。

昭和64年に起きた少女誘拐事件という大きなストーリーに
実に多くの人間や組織が関係しており、それが同時に進行していきます。

そしてそれぞれの登場人物が重要なポジションをとっており
主人公である三上だけの感情を見るだけでは、面白さは半減してしまうと思います。

三上と関係する人物と三上。
それぞれの立場を考えながらそれぞれの感情を読み取ることが出来た時に
本作品の面白さが最大になると思います。

それほど登場してこない人間でも
実はこんな感情を秘めていたんだということが理解出来た時に
そこに新しいストーリーが生まれ、全体のストーリーの厚みが増していく
そんな作品だと感じました。

もちろんクライマックスの事件解決と
被害者の父の行動や感情については、心を打たれます。
最後までしっかりと考えられており、感動させてもらえる作品です。

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