《読書感想》
◆神様の暇つぶし◆
私を抱きたいではなく、撮りたいと言った

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神様の暇つぶし

神様の暇つぶし:千早茜
神様の暇つぶし:千早茜
神様の暇つぶし:千早茜

私を抱きたいではなく、撮りたいと言った

神様の暇つぶし:読書記録
神様の暇つぶし:読書記録

『神様の暇つぶし』について

本作は、恋愛小説の枠を超えた、記憶と身体、そして「関係の不可逆性」を描いた濃密で、さらに魂に触れるような物語。

『神様の暇つぶし』あらすじ

主人公は、父を亡くした20歳の大学生・藤子。
彼女が出会うのは、父より年上の写真家・廣瀬全(ぜん)。

夏のひとときを彼と過ごし、二人は食事を共にし、会話を重ね、やがて二人は恋に落ちる。
しかしその関係は、甘美であると同時に、痛みと喪失を孕んでいたのだ。

全が遺した写真集『FUJIKO』を通じて、藤子は自分の記憶と向き合うことになる。
そして気づく――「神様の暇つぶし」だったのは、彼ではなく自分自身だったのかもしれないと。

著者 千早茜さんの情報

千早茜(ちはや あかね)さんは、繊細な感性と独創的な表現で知られる日本の小説家です。

彼女の作品は、食や植物、恋愛、孤独、そして人間の心の揺らぎを美しく描き出すことで高く評価されています。
そして、作品を読むたびに新しい感情の層を発見させてくれるような深みがあります。

デビュー作は『魚神』という作品で、2008年に発表されています。

千早茜さんの代表作
  • 魚神(2008年)
    デビュー作。詩的な文体と神話的世界観
  • 男ともだち(2014年)
    男女の友情と孤独を描く。新井賞受賞作品
  • しろがねの葉(2022年)
    直木賞受賞作。幻想的で深い人間描写

『神様の暇つぶし』の感想

ここからは『神様の暇つぶし』を読んだ感想を書いていきます。
『神様の暇つぶし』は、恋愛小説の枠を超えた、記憶・身体・関係性の不可逆性を描いた濃密な物語でした。

人と人が関わることの意味を問いかける作品で、読者自身も深く考えさせられる作品となっていました。
さすが千早茜先生!

恋愛と記憶の交錯

これまで恋愛という恋愛をしたことがなかった主人公・藤子が、ある1人の男性・全に対して恋愛感情があることに気付く。

最初は恋と分からず、恋でもなく愛でもなく、渇望や欲求のようなものだと感じていた。
この気持ちは恋愛だと気付き、誰かと関わると、もう出会う前の自分には戻れなくなる姿が繊細に描かれており、印象的だった。

藤子にとって全との思い出は、醜さも含めて輝かしいものだったのだ。

食と身体の描写

桃を齧る藤子の描写が官能的で、生命力の象徴として印象的であった。

この物語では、食事をするシーンを描く場面が何度かある。
この食事のシーンが、人間の欲望と、感情の交錯を大きくイメージさせる象徴として機能していると感じた。

写真と芸術の視点

全は藤子を「抱きたい」ではなく、「撮りたい」と言い、藤子を作品として残すことを優先し始める。この言葉には全のどのような感情が含まれているのか、そこを読み解くのが難しかった。

全は藤子を作品として見ていたのか、それとも、藤子を残したかったのか。
どちらであったのか、その繊細な心情を読み取れれば、この作品の本当の意味が分かる気がした。

全がいなくなった後、写真集『FUJIKO』を通じて、藤子は自分の記憶と向き合うようになる。
全は、藤子を残したかったのか。

最後に分かる反転

この作品のタイトル『神様の暇つぶし』。
このタイトルの意味が、作品を読み終える頃には分かってくる。

その意味は、作品を読み始めた時に感じるものとはまるで違うものとなる。
作品の序盤で読者の誰もがそのタイトルの意味を違う意味で捉えてしまう、これも千早茜先生の技だと感じました。

『神様の暇つぶし』を読んでの感想まとめ

主人公である藤子の視点から語られる回想は、読者自身の記憶や感情を揺さぶる力を持ち、特に食事の描写は欲望と生命力の象徴として印象的だった。

桃を齧る藤子の姿、滴る果汁は、彼女の変化と官能性を象徴する場面として語られ、身体性と感情が交錯する瞬間を鮮やかに描かれているように感じた。

この作品は、恋愛というよりも「人と人が関わることの意味」を問いかける作品であり、「誰かと関わると、もう出会う前の自分には戻れなくなる」という言葉が、読後に強く残る。

千早茜さんの筆致は濃密で繊細であり、藤子の内面の揺れや、全との関係の複雑さを言葉の温度で描き出しており、『神様の暇つぶし』は、読む者の記憶や感情を濾過し、結晶化させるような一冊であった。

恋愛の痛みと美しさ、記憶と記録、そして食と身体の交錯を通じて、読者に「生きること」の本質に触れる文学的体験を与えてくれる。

タイトルの「神様の暇つぶし」は、当初は全の視点からの命名と思われるが、物語の終盤で藤子自身が“神様”だったのではないかという逆転の視点が提示されることで、読者に深い余韻を残す。
こういう展開がさすが千早先生と思わせてくれる!

『神様の暇つぶし』の分析・評価

雪の花:分析・評価
雪の花:分析・評価

『神様の暇つぶし』はこんな人におすすめ!

  • 記憶や過去の恋愛に向き合いたい人
  • 人生の転機や喪失を経験した人
  • 芸術や写真に興味がある人
  • 40代以上の人

『神様の暇つぶし』SNSでの反応!

SNSに投稿されている「神様の暇つぶし」に関する投稿を見つけましたので掲載しています。

沢山の投稿がありましたが、その中から心に残った投稿を掲載させていただきました。

Xでの反応!

Xでも「雪の花」に関するたくさんの投稿があります。
本書の魅力がよくわかります!

Inatagramでの反応!

Instagramでも多くの方が「神様の暇つぶし」に関する感想を投稿しています。
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