普通じゃない、だから異物。普通って何ですか?治すって何を?
【コンビニ人間】

読書感想小説人生・人間ドラマ

「コンビニ人間」

コンビニ人間_村田沙耶香

普通って何ですか?治すってどこを治すんですか?
誰か教えて!

コンビニ人間_読書記録

「コンビニ人間」について

本作品は、芥川賞受賞作品、2017年本屋大賞9位の人気作品です。
著者は、村田 沙耶香さん、この作家さんの本を読むのは本作品が初めてでした。

アメトークの「読書芸人」でも招待されたということもあり、書店で見つけて、タイトルや表紙もずっと気になっていた作品でした。
この度遂に読了!

まず読了後に思ったことは、本当に面白い!さすが賞を受賞した作品だと感じました。
タイトルを見て、まさかコンビニで働く人の話ってわけじゃないよなと思っていたのですが、コンビニで働く人の話でした。

しかし、これが面白かったです。
コンビニで働く人たちのことや、コンビニで働くという仕事についても紹介されていて、知らないことも多く知ることが出来る作品です。

そんなコンビニで働く人たちの1人が主人公となる物語です。
主人公の女性がコンビニで働くのには訳があります。彼女はたまたま見つけたコンビニのオープンの張り紙を見て、コンビニで働いてみようと思います。

なぜコンビニで働こうと思ったのか、コンビニで働くことに興味があったのはもちろんですが、もう一つアルバイトをすることには目的がありました。
それは、自分が「奇妙」であるということを少しでも周りに思わせないこと、それで家族が安心するから。というものでした。

世界に部品になれた!

主人公の女性は、幼い頃から周りに奇妙な人と思われてきて、家族がそのことで悲しい思いをしているということをずっと感じながら生活してきました。

そんな主人公の女性は、コンビニで働くようになって、コンビニの仕事をこなしていくうちに、周りと同じように働くことによって、初めて自分が、みんなと同じ世界の部品の一つになることが出来たと感じることができたのです。
世界の部品として、今自分が誕生したのだと感じていたのです。

彼女は、心の中では自分が人と違うんだということを感じ、そんな自分を隠すために、人が感じているのと同じように感じているフリをして過ごしてきました。

自分の行動や反応を周りの人の行動や反応に合わせる、周りと同じようにすることが当然のこと、そうしなければいけないのだと自分自身に言い聞かせ、だから自分は必要以上のことはしゃべらない、動かない、コンビニの仕事をこなすために必要なことだけを習慣にして生活しようと決めて生活していました。

主人公の女性は、とにかく「コンビニの仕事を合理的にこなす!」そのことだけを生活の中心として生きていきます。
そのせいで、恋愛もしない、結婚もしない、就職もしたことがないという状態がずっとつづいていました。

彼女が、恋愛、結婚、就職、それらのことをしたことがないということに対して、周りの人たちが驚く。
何故それらをしたことがない、経験したことがないということが普通じゃないのか。
そして、何故同じように普通にやらなければいけないのか、自分は何をどう変えればいいのかが分からない。

普通って何?という気持ちを常に心に持っていました。
そんな主人公の普通ではないという生き方。
しかし、その何故同じようにしなければいけないのか?なぜその生き方がいけないのか?

なぜ周りの人がやっている当たり前の生き方と言われる生き方に、自分の生き方を合わせなきゃいけないのか。
それが本当に分からないという主人公の純粋さを持った生き方に対して、徐々に惹かれていきました。

[st-kaiwa5]ほんと、普通って何だろうね。
沢山の人がそうするから、同じようにする。それが普通ってことなんだろうね。でもそれが正解かは分からないよね。みんながそうするから同じようにしなさいっていうのは違うとおもうなぁ。主人公はそんな世界に苦しんでるんだね。[/st-kaiwa5]



「コンビニ人間」を読んで!まとめ

本作品は、幼い頃から、人と考え方や言動が違うということで「奇妙な人」と言われて育った女性が主人公です。
確かに彼女の言動や行動は人と違います。

時には人が驚くような言動であったり、人が嫌味を言っているのに、それに全く気付かない、そんな一見変わった人と思われる女性は、コンビニという場所で働くことで、同じコンビニで働く人たちと同じように仕事をこなして生活していきます。
つまり普通の人を演じながら生きていくのです。

彼女は、コンビニという場所での働き方には、こうしたらいいんだよというマニュアル、普通の人として見られるためのマニュアルがあるように感じていたのです。
周りの人と同じように行動して働く、そしてそれを人が喜ぶ、彼女は、そうして生きていかなきゃいけないんだと自分い言い聞かせ、そう思い込み、それを習慣とした生き方をしていくのです。

もし人と違うことをすれば、この世界はそれを異物と判定してしまう。

そして異物と認定されてしまった人にとって、この世界はとても生きにくい。
それは個性だよと口では言ってくれるけど、心ではそう思っていないということもよくある世の中なのです。

「この世界は異物を認めない。僕はずっとそれに苦しんできたんだ」

「コンビニ人間」P.89 より

「普通の人間っていうのはね、普通じゃない人間を裁判するのが趣味なんですよ。」

「コンビニ人間」P.123より

本文より引用したこの2つの文章がとても印象に残りました。

何が普通で、何が普通でないかの基準も示さずに、多くの人は、勝手に周りの人と同じでない人のことを、「普通ではない人」と判定します。

周りからそう見られて生きている人は本当に苦しみながら生きているのだと、本作品を読んで思いました。
そして更に、多くの人は自分を普通の人間だと勝手に思い込み、普通でないと判断した人を裁判する、本当にその通りだと思いました。

私自身も、知らず知らずのうちに、勝手にこれは普通、これは普通じゃないと自分の基準で人を判断してしまっていることがあると思いました。
心の中で勝手に判断してしまうことは誰しもあることだと思います。
問題は、その判断結果を人に押し付けることだと思いました。

今よくニュースで取り上げられるSNS上での誹謗中傷も、この「普通」という部分から外れたと勝手に判断された人を、皆で攻撃しているという状態だと感じました。

女性は結婚しないといけない!男は就職しないといけない!それが出来ないのは普通じゃない!
それを人に押し付けてはいけないと感じました。それは自分の中での普通であって、その普通を、他の誰かに当てはめてはいけないと感じました。

本作品を読みながら、ずっと思ってきたのは「普通とは何か?」ということでした。
本作品の中で、普通になることを「治る」と表現している部分があります。
「治る」とは悪い状態がいい状態に改善されるという意味です。ここで「治る」という言葉を使ったのも、何故「普通」が「いいこと」、「いい状態」なのかを読者に考えてもらうためだったと感じました。

本作品の主人公の女性は、周りから「奇妙な人」と判断され、ずっとそれを家族のために隠して、みんなが「普通」と感じる人を演じてきました。

彼女の奇妙とされる言動には一切の悪気はなく、「合理的に物事を考えたら、そうした方がいい!」とただそう思ったからそう言っただけ。
そんな彼女の言動は、空気が読めない人、気遣いができない人と、周りの人たちに見られるでしょう。
しかし、本作品を読み進めていくうちに、そんな彼女の言動が、「純粋さ」に思えてきました。

彼女は周りから嫌味を言われても、それを嫌味と受け取ってません。それに腹を立てることもありません。
ただ周りが彼女のことを勝手に普通じゃないという部類に入れて、勝手に心配して、勝手に助けてあげようとする。
でも彼女はそんなことまったくあてにしてないのです。願ってもないのです。

世界は異物を認めない。普通でないことは異物。普通って何ですか?
このことを問う作品だったと思います。

本作品を読み始めたときは主人公の不器用さを感じるだけでしたが、読み進めていくうちに、主人公の女性の不器用だけどまっすぐな生き方に、後半は可愛さを感じるようになり、惹かれていきました。

読旅
読旅

普通って何?それにはっきりとした、誰もが納得する答えって。 難しいね~。

「コンビニ人間」SNSでの反応!

SNSに投稿されている「コンビニ人間」に関する投稿を見つけましたので掲載しています。

沢山の投稿がありましたが、その中から心に残った投稿を掲載させていただきました。

Twitterでの反応!

ツイッターでも「コンビニ人間」に関するたくさんの投稿があります。
中村文則さんの人気の高さがよくわかります。



Instagramでの反応!

Instagramでも多くの方が「コンビニ人間」について読了後の感想を投稿されています。
画像とともに、深い感想を投稿されています。
ご興味のある方は是非ご覧になってください。

 

 
 
 
 
 
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