《読書感想》
◆雪の花◆
疫病の予防法を広め、疫病と闘った男の生涯

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雪の花:吉村昭
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雪の花

雪の花:吉村昭
雪の花:吉村昭

疫病の予防法を広め、疫病と闘った男の生涯

雪の花:読書記録
雪の花:読書記録

『雪の花』について

本作、吉村昭さんの『雪の花』は、記録文学の名手である著者が描いた、江戸時代末期の町医者・笠原良策の実話に基づく感動作です。

『雪の花』あらすじ

舞台は、幕末の福井藩。
天然痘(疱瘡)が猛威を振るい、多くの命が失われていた時代。

主人公は町医者・笠原良策。
漢方医だったが、天然痘に無力さを痛感し、蘭方医学(西洋医学)へと転向することになる。

そして、天然痘の予防法「種痘」が異国から伝わったことを知り、私財を投げ打って痘苗(ワクチン)を福井に持ち込み、藩医や役人たちの妨害にあいながらも、民を守るための、雪深い峠越えによる痘苗の輸送を決行する。

狂人と蔑まれながらも、命を救うために種痘の普及に尽力する信念を持った姿が描かれる。

著者 吉村昭さんの情報

吉村昭(よしむら あきら)は、日本の記録文学・歴史文学の第一人者として知られる作家です。

綿密な現地調査と史料収集に基づくリアリズムで、人間の本質や死生観を探求する哲学的なテーマの作品が特徴で、無駄のない筆致で淡々と物語を描くスタイルが、読者を作品から離さない。

吉村昭さんの代表作
  • 戦艦武蔵(1973年)
    太平洋戦争に沈んだ戦艦の建造から沈没までを記録文学として描いた作品。
    菊池寛賞受賞
  • 破獄(1985年)
    4度の脱獄を成功させた無期刑囚・佐久間清太郎の実話を基にした記録文学。
    読売文学賞・芸術選奨文部大臣賞受賞
  • ポーツマスの旗
    日露戦争後の講和交渉に挑んだ小村寿太郎の姿を描く歴史小説
  • 三陸海岸大津波
    明治・昭和期に三陸を襲った津波災害を証言と史料で再現

『雪の花』の感想

ここからは『雪の花』を読んだ感想を書いていきます。
小説『雪の花』は、江戸時代末期の福井藩を舞台に、天然痘(疱瘡)と闘った町医者・笠原良策の実話をもとに描かれた記録文学です。

医療も現代ほど発達していない時代に、彼がどう天然痘と闘ったのか、感動の物語の感想をまとめます。

医療と信念

当時、天然痘に効く特効薬が無い時代、私たちもコロナ禍を経験しており、同じような経験をしている。

社会の中でまだ信頼されていない薬や医療行為に対して、その普及を妨げる様子がリアルに細かく描かれている。
主人公である町医者の孤独な闘いと、この病気は治すことが出来るんだという信念が強く感じられ、作品に引き込まれていった。

タイトル『雪の花』が象徴するもの

タイトルである『雪の花』が、この物語を表現するタイトルとして、どのような意味で使われているのか、それをまず考えてみた。

物語の中で、雪の中を峠を越えて、天然痘に効くものを運ぶ場面がある。
その場面で、雪の中を厳しい寒さに耐ながら、運ぶ姿が、その一点だけは希望の象徴であるような、そんなイメージが浮かんだ。

タイトルの『雪の花』も雪の中で咲く一輪の花であり、小さくもあるがそれはまさに希望の象徴であるとイメージすることができ、主人公が雪の中峠を越える姿が、『雪の花』と重なる感覚であった。

社会の抵抗と葛藤

いつの時代でも同じだとは思うが、何かこれまでになかった未知のものを世に広めようとすると、ある種の抵抗が生じてしまう。社会的な抵抗が起こってしまうと、新しいものが正しいかどうかも分からなくなり、ただただ批判され、邪魔されるような事態となってしまう。

社会を助けるものとなりうるものを、社会が抵抗し潰していく、この状況や主人公の葛藤がリアルに描かれていて、現代にも通じるものだと感じた。

著者の特徴が表れた筆致

吉村昭さんの特徴が、よく表れている作品だと思いました。

感情を抑えた冷静な感じの記録的な描写が、逆に読後に深い余韻を残します。読者はこの雰囲気にぐいぐい引き込まれていくんですね。

大げさに表現したり、事実とは少し違った表現を使ってドラマ性を高めるよりも、事実の積み重ねと感じるスタイルを重視することで、物語全体に重みを感じる。

ドラマ性を求めている読者さんには少々物足りなさを感じるかもしれません。

『雪の花』の感想まとめ

この作品は、医学の進歩と人間の信念、そして社会的抵抗との闘いを描いた、静かで力強い記録文学で、天然痘という未知なる病と向き合う人間の知と情熱を描いた作品でした。

吉村昭先生ならではの緻密な取材と簡潔な筆致が生み出す物語は、記録文学でありながら圧倒的な人間ドラマとして読者の胸を打ちます。

現代にも通じる「ワクチン忌避」「医療への不信」といった社会的テーマが、歴史的事実として描かれる点が秀逸で、科学と人間の間にある“信じる力”や“理解を得る難しさ”に焦点を当て、医療者の孤独な戦いが胸を締めつける作品でした。

『雪の花』というタイトルは、寒さや孤独、障壁を象徴しつつも、その中に咲く希望を表しています。吉村昭が描くのは、医学の進歩以上に信念の力と、それを貫くことの尊さです。

『雪の花』というタイトルは、寒さや孤独、障壁を象徴しつつも、その中に咲く希望を表しています。
吉村昭が描くのは、医学の進歩以上に信念の力と、それを貫くことの尊さです。

この物語は、「社会に理解されない者が、それでも人を救おうとするとき、どんな困難があるのか」を静かに問いかけてきます。現代を生きる私たちが、科学と向き合う姿勢を再考するうえでも、大きな示唆を与えてくれる作品でした。

淡々と事実を積み重ねる吉村先生の文体が、読了後に深い余韻を残します!

『雪の花』の分析・評価

雪の花:分析・評価
雪の花:分析・評価

『雪の花』はこんな人におすすめ!

  • 医療や公衆衛生に関心がある人
  • 歴史・記録文学が好きな人
  • 社会的テーマに敏感な人
  • 静かな感動作を求めている人

「雪の花」SNSでの反応!

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沢山の投稿がありましたが、その中から心に残った投稿を掲載させていただきました。

Xでの反応!

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Inatagramでの反応!

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