
水を抱く

初めて会った男を舐めた、切なすぎる男の純愛

『水を抱く』について
本作は、石田衣良さんの小説で、危うさと純粋さが交錯する大人の純愛小説。
「性」と「生」を静かに見つめながら、人が本当の自分に出会っていく過程を描いた、とても繊細で豊かな物語です。
性と心の深層に踏み込むような展開で、読者の感情を揺さぶります。
『水を抱く』あらすじ
主人公は俊也、29歳の医療機器メーカーの営業マン。
ある日、ネットで知り合った女性・ナギと出会います。
彼女は俊也より5歳年上で、奔放で謎めいた雰囲気を持つ女性。
雑居ビルの非常階段、秘密のクラブ、デパートのトイレなど、日常から逸脱した場所で過激な行為を重ねるものの、ナギは俊也と最後まで寝ようとはしません。
その拒絶には、彼女の過去に深く根ざした理由がありました。
最後には、ナギの過去が明かされ、俊也との関係が新たな段階へと進みます。
2人がたどり着いた姿とは、大人の切なすぎる純愛物語。
著者 石田衣良さんの情報
ペンネーム「石田衣良」は、本名「石平(いしだいら)」を分割したものということです。
青春や恋愛、社会派、SFから経済など、幅広いジャンルの作品を書いています。
そして透明感のある文体が特徴で魅力でもあります。
現代社会の問題などを鋭く作品に反映し、社会の今を切り取る作家さんで、若者から大人まで幅広い層に支持されています。
さらに登場人物の心情描写が丁寧で、読者の共感を呼んでいる、人気の作家さんです。
石田衣良さんの代表作
『水を抱く』の感想
それでは『水を抱く』を読んだ感想を書いていきます。
『水を抱く』は、官能的な描写と切ない純愛が交錯する、大人の恋愛小説です。
官能と純愛の融合
本作では、エロティックな描写が多く出てきます。
読んでいても、結構刺激的だなぁと感じる部分もありました。
しかし、この刺激的すぎるほどのエロティックな描写が、ナギの心の傷や俊也の愛情とうまく絡み合っていて、そんな性に奔放なナギが、そのイメージとは逆に、純粋であるというイメージにより大きく振れて変わっていくために表現されていると感じました。
そのエロティックな表現があるからこそ、ナギの純粋さがより際立ってくるのだと思いました。
ナギというキャラクターの複雑さ
ナギは、性に奔放で謎めいた女性として登場しているのですが、物語が進むにつれて、徐々にナギの過去が明かされていき、彼女に対する印象が変わり始めます。
物語の中でナギの不思議な行動がいろいろと出てきます。
しかし彼女のその行動には理由があり、それを知ったとき俊也の「抱きたい」という気持ちが、単なる欲望から深い愛情へと変化していきます。そして様子を感じていると、なんとも切ない気持ちになっていきました。
タイトル『水を抱く』の意味とは
ナギのことを抱きたいと思う俊也。
しかし、ナギは俊也の気持ちをもてあそぶように、俊也のところからスッと離れていくこともある。
それはまさに水のようで、形もなく、すくえば指の隙間から流れて逃げて行ってしまう。
抱こうとすればこぼれてしまう。
このように水とナギを重ねる意味がありながら、ナギの壊れた心と俊也の包み込むような愛情を象徴しており、読了後にじんわりとそのタイトルに込められた意味を感じることが出来ました。
『水を抱く』を読んでの感想まとめ
「水を抱く」というタイトルは、ナギの壊れた心と俊也の包み込むような愛情を象徴しているかのようで、水のように形を持たない感情、流れゆく時間、そして抱きしめることの意味。
それらが静かに、しかし力強く描かれていました。
読み終えたとき、心にじんわりとした温かさが残ります。
ありのままの自分を受け入れてくれる誰かがいるかもしれない。そんな小さな希望が胸に灯る作品です。
そして切ないほどの純愛。
過激なシーンと真逆とも感じる純愛、この対比が、この愛の切なさを更に大きく深くしていると感じました。
「抱く」という行為が単なる肉体的接触ではなく、相手を受け入れる・理解する・支えるという意味に昇華されていて、人との繋がりの本質を教えてくれる作品。

まるで水面に映る光のように透明感があり、情景描写から人物の感情まで、余韻のある言葉で綴られていた。
性を描く場面も美しく、いやらしさではなく尊さを感じさせる筆致が印象的でした。
『水を抱く』の分析・評価

『水を抱く』はこんな人におすすめ!
「水を抱く」SNSでの反応!
SNSに投稿されている「水を抱く」に関する投稿を見つけましたので掲載しています。
沢山の投稿がありましたが、その中から心に残った投稿を掲載させていただきました。
Xでの反応!
Xでも「水を抱く」に関するたくさんの投稿があります。
本書の魅力がよくわかります!
『水を抱く (新潮文庫)』の感想
— まき (@saku_aya_MAKI) May 26, 2025
性に自由奔放なナギに惹かれていく俊也。快楽を教えられ、不安定なナギをみせられ、ナギを守りたいと思うのに、ナギを仕事の道具として使ってしまう…
エロティックな口元の印象が脳内で強く残る究極の間の小説。#ブクログ https://t.co/zaEtWYat2Z #ブクログ
失礼ながら、ポイント消化込みでネットの中古ショップで購入。
— 高山彩月(たかやまさつき) (@satsuki_book05) July 2, 2025
「水を抱く」石田衣良
紹介文曰く、「石田衣良史上もっとも危険で淫らな純愛小説」らしい。
石田衣良さん自体、恋愛小説に性描写はつきものなのに『もっとも』とは。
楽しみ。#今日買った・届いた本を紹介する pic.twitter.com/55NsVFqWRP
Inatagramでの反応!
Instagramでも多くの方が「水を抱く」に関する感想を投稿しています。
本書の魅力がよくわかります!
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