兄弟をまた繋いだのは父が残した一挺のバイオリンだった
【茨の木】

読書感想小説人生・人間ドラマ泣ける・感動

「茨の木」

茨の木_さだまさし

兄弟の心を繋ぎとめたのは
父が残した一挺のバイオリンだった

茨の木_さだまさし

※クリックで読書記録は拡大できます



「茨の木」について

本作品は、歌手の「さだまさし」さんが書いた小説です。
さだまさしさんが書かれた小説を読むのはコレで2冊目です。

さだまさしさんの本は、インスタグラムのフォロワーさんが感想をアップされているのを読んで、読んでみたくなりました。

歌手であるさだまさしさんの独特の表現であったり心情が、小説の中にも多く見られ、小説の中に現れる表現も、歌と同じように綺麗で繊細で優しい、そして登場する人物はとても人間的で、読んでいると、その雰囲気に和やかさを感じます。

初めて読んだ「眉山」に続き、本作品もでも、さだまさしさんの独特の表現に魅了され、最後までその世界に引き込まれて読み終えました。

家族・兄弟の日常と遠い国との繋がり!

家族で揃うと、どうしてもぶつかってしまう父親と兄弟。
素直になれない口下手な男同士の親子関係が、弟を家から離れさせてしまいます。

このような関係は、どこの家族でも見られる光景。
日本の家族の日常、そんな中で兄弟を残して、父親が旅立ってしまいます。

父親の死を受け、父親に対して素直になれなかった弟は、後悔も混ざった様々な思いを胸に、一人暮らしていました。
そんな中、届いた「一挺のバイオリン」。それは父が大切にして、弾いていたバイオリンでした。

そのバイオリンを送ってきた送り主は実家を継いでいる兄。

バイオリンを受け取った弟は、何故かそのバイオリンのルーツを知りたくなります。
そして、そのバイオリンのルーツを探るために、自ら遠い外国へと旅に出るのです。

行き着いたその先で、弟は様々な人たちに出会い、出会った人々の優しさに触れながらバイオリンのルーツを探していきます。
遠い異国の地で経験する人々の言葉、悲しみ、優しさ、温かさ、その生き方に、日本にいる家族、兄のことを思い始めます。

父が残したバイオリンが導いた遠い異国の地で思うのは、日本にいる普通の家族のこと。
異国の地と日本の家族、父が残したバイオリンがきっかけで魅せられ、気付かされる家族の絆とは。
そして弟が最後にたどり着いた、その気持ちに心打たれます。

[st-kaiwa5]男同士の会話。
いつも本心とは違うことを言ってしまう。態度をしてしまう。
でも最後には、大きな優しさが溢れてくる。[/st-kaiwa5]



「茨の木」を読んで!まとめ

本作品は、さだまさしさんらしい素敵な表現が多く使われている人間味溢れる作品です。

背景となる生活感のある家族の風景や、旅先である異国の地の表現、そして何より人間たちの感情やつながり、言葉の表現がどれも素晴らしく、人間の優しさや温かさを感じずにはいられません。

父が残したバイオリンのルーツを探りながら、人と人のつながりや家族のあたたかさに気付き、その心情が人間味のある言葉で表現されていく。
驚くようなどんでん返しがある作品というよりも、家族や人間の生き方、つながりなど、人間的な部分を実に深く考えさせてくれる作品です。

心にゆっくりとジンと伝わってくる優しさ、温かさ、読んでいて思わず優しい気持ちになったり、じわっと涙が溢れてきたり
さだまさしさんの歌の歌詞から感じられるものと同じような、「人」が持つ優しさの部分がとても伝わる作品でした。

家族の中では、時にはぶつかったり喧嘩したりします。
当たり前にあると思っている家族。分かってはいるけど素直になれずに気持ちがすれ違ってしまう。

でも、最後にはその家族の絆を自ら深く感じ、知ることになります。
その絆は幼かったあの頃からずっと変わっていない、当たり前に存在しているあまり、ただ忘れてしまっている、そんな家族の絆を思い出させてくれたのは、父が残したバイオリン。

父は後に残した息子である兄弟二人に何を伝えたかったのか、そして、そのバイオリンを弟に送った兄は弟に何を伝えたかったのか
口下手な男たちの様々な思いが、すれ違いながら、やがてその本当の思いに気付いていきます。

父親とお兄の本当の思いに気付いたとき、弟の口からこぼれた言葉。
涙がジンとあふれ出す、優しい気持ちに包まれるエンディングでした。

家族のあたたかさや兄弟の優しさに気付けなくなってしまっている。
そんな自分に気付いてしまった時に是非読んでおきたいおススメの1冊です。

「茨の木」を読んでみたいと思ったらコチラ!

その他のおススメ小説はコチラ!

コメント

タイトルとURLをコピーしました