「夜が明ける」
人生勝ち負けではない。
助けてもらうことは負けることじゃない。
本当に助けが必要な人たちが見逃されている。
2022年本屋大賞ノミネート作品!
2022年 本屋大賞 第6位!
「夜が明ける」について
西加奈子先生の「夜が明ける」。この作品が5年ぶりの長編小説、しかも本屋大賞ノミネート作品に選ばれたということで、迷わず購入しました。このインパクトのある表紙にも釘付けになりました。
長編小説の前作である「i」は、2017年に本屋大賞第7位を獲得している作品です。この作品もすごい作品でした。そんな期待があったので、この作品「夜が明ける」も期待しながら楽しみに読みました。
読んでみて、まず思ったことは、読んでよかった!さすが西先生と感じる作品でした。400ページを超えるボリューもある作品ですが、ぐいぐいと読み進めることができて、そして読みやすいと感じる作品でした。
学生の頃に出会った、体が大きい同級生。彼はそれまで体が大きいのに、誰からも相手にされない寂しい存在で過ごしていました。しかし、ある日、彼が外国の俳優さんに似ているということから、同級生の一人が、彼にその俳優さんの名前をあだ名として付けます。それからあだ名をつけてもらった彼は学校でも注目される存在に。
あだ名をつけた彼と、あだ名を付けてもらった彼、二人の出会いから、それぞれが生きていく人生を描いています。二人はそれぞれ違った人生を歩んでいきますが、その人生はとてもうまく行っているとは言えません。仕事はできていても、人間関係などから、精神的には追い込まれていくという状況に陥っていきます。
そんな辛い状況になってしまった二人は、やがて予想外の形で、お互いの人生を知ることになります。
今の時代に生きる若者が、うまく行かない状況の中で、もがき苦しみながらも、そして自暴自棄になりながらも生きていく、一生懸命前を向こうとする姿を描いています。
「夜が明ける」を読んで
本作品も、前作の「i」に負けない人間の生き方、感じ方、心の中の気持ちを表現した作品であった思います。西先生らしい表現が所々に出ていて、「i」以来読んだ西先生の作品でしたが、先生のワールド、表現をじっくりと感じることが出来て、大変満足しています。
所々にある少し厳しい、そして汚い表現などに対応するように感じることが出来る「優しさ」があったと感じました。この独特な表現と、その流れが、些細なことで普段気付けないような人間の悪の部分と、善、優しさの部分をより強調して感じることが出来るようになります。
本作品を読み終えて、感じることが出来たのは、今の時代の生きやすさと、それとは逆の生きにくさでした。色々な部分で便利さが極められ、快適に過ごすことが出来るようになったと感じることが出来る現代ですが、人間の心は、それに比例して幸せを感じているでしょうか。
この作品では、今の世の中を生きていく中で感じる辛さをリアルに表現していました。便利になった世の中で感じる人間の悪の部分。その悪によって心が壊されていく、善のつもりで接したことが、その善を受けた人にとっては悪に感じることがある。人間関係で感じるお互いの感覚のズレ、そしてそのずれを感じながらも、それを受け入れていくしかない人と、それを上手に拒絶する人。
色々な人間の生き方が、この作品の中に見えます。
そもそもそう感じる心を与えてもらえる環境じゃなかったんだよ。あらゆる人の優しさを、そのまま受け止められるような世界に、私はいなかったんだよ。
(P.217)
子供の頃に、素直に人の優しさを、心を感じるという環境ではないという人も結構います。私の周りでもそういう環境で育っている人がいます。今でもその人と話すと、子供の頃の思い出はあまりいい思い出ではないと言います。それを知らない人たちは、彼が心の中にそういった感情を持っているなど思いもしていないと思います。
確かにそういう環境でも不自由なく成長している人もいますが、多くの方は、心に不安を抱えて、人を信用することが怖いと言います。
仲良いから、美しいから、正しいから権利があるのではなくって、私たちは、どんなにクズでも、ダメな人間でも、生きているから、権利があるんじゃないの?
(P.375)
今の世の中、ちょっと人と違ったり、人の輪に入れなかったりすると、途端に生きる権利がなくなったかのように、周りから責められることがあります。それは若い世代に特に多いように感じます。芸能人がちょっとでもおかしなことをしたり発言したりすると、SNSを使って袋叩きにします。そんな権利ないはずなのに。
匿名で一斉に投稿して、袋叩きにする。中には、自分は正論を言っている、正義感で言っているのだと思っている人がいます。正義感でやっているから問題ないと。これがこの問題の厄介なところでもあります。SNSに投稿している人は、いいことをしていると感じている人もいるのです。
言っている内容は正しいのかもしれないが、そのやり方がちょっと違うということを、投稿する前に考えたほうがいい。
そして、生きる権利を奪われて、辛い思いをしている人たちは、どんどん自分の殻に閉じこもり、最後にはこの世からいなくなったかのように、人の目に触れることはなくなります。
そうなると攻撃した人たちは知らん顔。その後はどうでもいいのです。その人を攻撃して、ついには世間から追い出してやったという達成感に浸っているのです。
このような世の中で、助けが必要になっている人は多くいます。そんな時に、素直に助けを求めることが出来る環境が今の世の中にあるのか、この作品では、助けが必要な人たちが素直に助けを求めることが出来ない、そんな世の中に疑問を感じているように感じました。
行き過ぎだ優しさは、人を傷つけることにもなるが、本当に助けてほしい人が「助けて」と言えない世の中が、果たして幸せな時代と言えるのか。
「助けてもらう」って言葉も改めないといけないですねぇ。「もらう」んじゃなくて。困ってる人を助けるのは当たり前のことだから。
(P.377)
助けてもらうことが、「負け」ということにつながる、助けてやったが「勝ち」につながる。これは本当におかしなことだとおもいます。助けてもらうことは負けることではありません。幸せに生きていくのに、勝ち負けの判定は関係ないと感じました。
本作品の表紙の絵が、今の時代に助けてと言えない若者たちの怒りや、苦しみを表現しているように感じました。
本作品を読んでいくうちに、優しさってなんだ?助けるって?幸せって?今の若者たちが一生懸命生きていき、そんな中で精神を壊してしまうような状況になる。これが優しい時代と言えるのか。便利な世の中になっても、人間の心が壊れていってしまうと、それは何の意味もなくなってしまうような気がしました。
誰もが安心して、助けを求めることが出来る。そして助けてあげるではなくて、助けることが当然だと言える、感じる時代になることが、便利になった今の時代にこそ必要なのではないかと感じました。
本作品で感じることが出来たことは、自分の生き方や、これからの人への接し方に大きく影響してくると思います。本当に読んでよかったと共感できた作品でした。
「夜が明ける」SNSでの反応!
SNSに投稿されている「夜が明ける」に関する投稿を見つけましたので掲載しています。
沢山の投稿がありましたが、その中から心に残った投稿を掲載させていただきました。
Twitterでの反応!
ツイッターでも「星を掬う」に関するたくさんの投稿があります。
本書の魅力がよくわかります!
私はデビュー作から西加奈子さんの作品が好きなんですけど、
これはホントにツラい人たちや、その周りに居る人たちにも読んで欲しいと思いました。読むのも凄く辛かったです。#読了 #西加奈子 #夜が明ける pic.twitter.com/zO6rJ4fJo1
— ふぐのみ (@2QQOL) February 22, 2022
たった数文字の言葉だけど、その言葉を言わせない、言いにくい世の中なんだな。装画もそれを、表現してるのかな。
この作品も少し読み進めては休憩しないと、気持ちがずるずる引きずられそうで怖かった。 pic.twitter.com/BXkGcwBaon— すぅBookLIFE (@sue_booklife) February 23, 2022
Instagramでの反応!
Instagramでも多くの方が「夜が明ける」について読了後の感想を投稿されています。
画像とともに、深い感想を投稿されています。ご興味のある方は是非ご覧になってください。
「ありがとう」のアイコンが可愛い!本や食べ物、楽しそうな日常を投稿されているInstagramです!本の写真、感想、とても綺麗で、詳しく丁寧に書かれていまるのが印象的です!
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統一感のある投稿で読書記録を紹介されているInstagramです。私も本を選ぶ時には参考にさせていただいています。感想もしっかり丁寧に書かれているので投稿を楽しみにしています!これからもよろしくお願いいたします。
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今回当ブログで紹介させていただくことを許可していただきありがとうございました。
「Aki」さん、「むつみ」さん!
今後も投稿楽しみに拝見させていただきます。
「夜が明ける」を読んでみたくなったらコチラ!
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